反乱のボヤージュ − 野沢尚

反乱のボヤージュ (集英社文庫)
先週はある程度時間があったので何冊か本を読むことができた。この本は小生が病床に臥せる本日一気に読んだ。
普段ミステリーしか読まないので野沢尚を知ったのも江戸川乱歩賞受賞作の「破線のマリス」だった。「砦なき者」もだが放送業界関係者*1ならではの作風を想像して読んでみたら意外と面白かった。

坂下薫平19歳。大学の廃寮問題に揺れる一方で、仲間たちのストーカー事件、恋愛騒動等が巻き起こり…。団塊の世代との対立と交流を通し、失われた父親的存在を探す、団塊ジュニアを描く青春長編小説。吉川英治文学新人賞受賞第一作。

主人公は首都大学*2の1年生で大学寮に身を置いているのだが、廃寮にしたい大学側と存続を訴える寮生側が全共闘時代のごとく対立する話。学校が派遣した寮監はかつて機動隊員として過激派と衝突した曰くつき。この寮監の存在が謎ではあるが物語が進むにつれてキャラクターが見えてくるという何とも心温まる展開だ。ラストでは寮に篭城するのだが、全共闘とのコントラストが寮監の背景と共に描かれていてドラマチック。*3しかしあくまでも本筋は寮生の大学生活である。その点、主要な登場人物の描写はキメ細やかでキャラが立っているので青春小説ぽい仕上がりとなっている。
うーん。書評ぽくなった。ついでに採点。
満足度:いただきました星5つ★★★★★。



一番のサプライズは野沢尚氏6月にお亡くなりになっていることだね。追悼。惜しい人をなくした。これから「龍時」買って読みます。「呼人」はイマイチだったよ。

*1:脚本家としてあまりに有名

*2:首都大学東京とは関係ありません。

*3:何となく「ぼくらの七日間戦争」のよう。思えば初めて自分で買った文庫本は「ぼくらの七日間戦争」だったかも。