終戦のローレライ − 福井晴敏

終戦のローレライ 上
終戦のローレライ 下

数々の文学賞を受賞し話題となった、前作『亡国のイージス』から3年。再び大海原を舞台とした骨太な海洋冒険小説が誕生した。本文は2段組、上下巻あわせて1000ページを超える大作である。
第2次大戦末期、主人公の海軍新兵・折笠征人は、未だ知らされぬ任務のため親友の清永と広島の呉軍港に降り立つ。そこでは、1隻の潜水艦が彼らを待っていた。その潜水艦こそは、戦争の形態を根本から変えてしまうという秘密兵器「ローレライ」を搭載していたドイツ軍のUボートだった。しかし、日本に到着する前、アメリカ軍の執拗な追撃のために「ローレライ」はやむなく日本近海に投棄されてしまっていた。折笠たちに与えられた極秘任務とは、それを回収することにあった。それを阻止せんとするアメリカ軍とのあいだで苛烈な戦闘が繰り広げられる。そして、その秘密兵器を日本の終戦工作に使おうとする陰謀が、密かに進行していた。

著者は、彼らの生死をかけた生き様や心理描写を通して、国家や民族について、また、日本人とは何なのか、そしてあの戦争は何だったのかを、前作同様読者に問いかけ続ける。重いテーマを背負い込んでいる作品だが、読み手があまり負担に感じないのは、物語がエンターテイメント性を失わないからであろう。

ここで描かれているのは過去の時代である。しかし問われていることは、いま日本という国に生きているわれわれ自身が直面している問題である。そういう意味で、この小説は「現代小説」といえるだろう。2003年度吉川英治文学新人賞受賞。(文月 達)

今日は風邪のため自宅療養。あと200頁ほどとなった「ローレライ」を一気に読みほしてやったぜ。3月公開の映画までには読了しようとは思っていたが、こんなにかかるとは思っていませんでした。病んだおっさんがいて、熱いおっさんがいて、若い男女が戦ってるお馴染みの展開でしたが、この先どうなるんだ???と常に先が気になるストーリーは面白かった!ほぼ2か月近くかかって読んだことになるけど、その間にローレライの予告編なんかで映画情報がすこしづつ耳に入ってくるので映画を見るような気分で読めた。どうやら映画のストーリーではフリッツはいないようだがこれは上映時間の都合上割愛されたのだろうか。2時間やそこらの映画にするのだから仕方ないか。。。
3つめの原子爆弾投下を阻止するというアツイ物語の裏には、現在の日本のありようも風刺されていて面白い。敗れて愛国を喪い、バブルが弾けて愛社を喪い、個性の尊重だとか謳いながらこれまでの教育方針を裏返して、荷の重すぎる『自由』を民に科したけど何か良くなったのか??ゆとり教育って何?民主主義?利己主義の間違いじゃないの?原子爆弾が東京に落とされて、日本が植民地化されアメリカの州の一部となって、そこから日本民族が独立を勝ち取って日本になったのなら、きっと今の日本とは違ってるはずだと思わされる。
そういや「亡国のイージス」も映画化されるみたいだ。夏公開かあ。

満足度:★★★★★!